戦略論・再考

June 12, 2010
日常のビジネス・シーンで頻繁に飛び交う【戦略】という言葉。ご存知のとおり、もともとは軍事用語だった。資本主義経済下では、企業としての強さは「他社 に対していかに競争優位を確立できるか」で決まることが前提となり、ここに企業経営は生存【競争】としての色彩を色濃くすることとなる。他社に対していか に競争優位を確立できるか、すなわち差別化が競争優位の源泉であるとしたのが、かの有名なM.E.ポーターが提唱した【競争の戦略】で、これを契機に戦略という言葉が一人歩きを始めたといっても過言ではないだろう。

それ以降、この【戦略】という言葉がコモディティ化し、日常的に使われているわけだが、その本質的な意味合いがおざなりのままに使用されているケースが多 い。とくに顕著なのが、いわゆる【戦術】レベルのオペレーションが【戦略】という言葉に置き換えられていることだ。言葉に対する安易な理解に端緒を発して いるように思える。ではなぜ、言葉への誤認が問題なのだろうか。

たとえば中小企業の経営者などによく聞かれる「うちの会社は集客が課題だ。集客をうまく機能させないといけない」という悩み。これはマーケティング活動の 結果論で、集客という戦術がうまく功を奏さなかったということの成果であり、そもそもの根本である「ある目的を達成するための統合的な考え方」が誤ってい たことになる。この根本といえるものが【戦略】なのだが、前述のような悩みをため息まじりにおっしゃる経営者の方にとっては、この「集客」自体が起点とな る【戦略】と混同しているがために、それ以上の発想ができないのである。

「結果」としての「集客」が上手くいかないということは、大局的な観点から事業をクリエイトできていない、もともと意図していたこと、つまりは「企業戦略」が誤っているのだといえるわけだ。

余談だが「集客というオペレーション自体がマーケティングなんだ」と、勘違いしていらっしゃる方が中小企業に多い。賛否両論はあるが、マーケティングとは いかに【顧客視点】で、市場で起きている事象をとらえ、いかに価値を提供するかという、ある意味では思想や哲学のようなものなのだ。この点では佐藤氏の見 解とも一致しており、この起点が同一のものであるから余計に共感できるわけだが。

では、その【戦略】の本来的な意味とは何なのか。学術的な定義は「ある目標やビジョンを達成するために、大局的観点から執行計画を立案し、効果的に資源を 配分し、実行の優先順位を定めること。」ということになる。佐藤氏の言葉を借りれば、「目的に対しての行動の最適化」「勝つための道筋」である。戦術は 「戦略に基づき、それを実行していく具体的な方法論(術)」だ。

何が言いたいのかというと、【戦略】とは効率的な資源配分・補給を計画し、「陣容を整えること」を指す。つまりは【戦略】とは、開戦以前の問題なのだ。いかに効率的に戦闘が行なえるかを意図すること。

古参企業では夢のような数字の予算立てをし、経営計画書としてまとめたものを戦略と勘違いされている方が多いのだが、本当の戦略とはそれを実現するための具体的方策のことを指すのだ。

整理すると、ある目標を達成するための道筋が戦略である。その戦略を具体的に執行するためのオペレーションが戦術となり、さらにその戦術を構成するタスクが戦闘なのである。

これを相撲にたとえると、秋場所に参戦するのか休場するのかという判断、参戦するのであれば体重を何キロにするのか、投げ技で勝負するのか、機動力で勝負 するのかといった、そもそもの帰趨する判断が戦略となる。そして取り組みとなり、いわゆる四十八手によるコンビネーションは戦術となる。取り組みも拮抗 し、そろそろ雌雄を決するという場面でうまく上手が取れるかどうかというのが戦闘ということになる。

「孫子曰く。昔の善く戦う者は、先ず勝つ可からざるを為して、以て敵の勝つ可きを待つ。」
「夫れ未だ戦わずして廟算して勝つ者は、算を得ること多ければなり。未だ戦わずして廟算して勝たざる者は、算を得ること少なければなり。算多きは勝ち、算少なきは勝たず。而るを況や算なきに於いてをや。吾れ此れを以てこれを観るに、勝負見わる。」
「敵を知り、己を知れば百戦危うからず。敵を知らず、己を知らざれば、戦うごとすなわち危うし」

という孫子の 兵法から、戦略の本質を見事に表している文節を好き勝手に抜粋してみたが、これらの教えのとおり、昔から戦略というものは情報戦としての色合いが濃い。情 報を制する者が戦いを制すとはよく言ったもので、自社および自社を取り巻く環境を正しく評価し、しかるべく明確な将来像を有することが戦略立案の要諦とい える。




松田 真実@次世代マーケターの理論武装

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