ソーシャルメディア時代のWebマーケティング論

May 16, 2011
僕が毎週発行しているメルマガ「コトラーから読み解く世界のマーケティング戦略」にて、
「 ソーシャルメディア時代のWebマーケティング論」というコラムを書いた。
非常に有用な内容になったので、ここで公開させていただく。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆コトラーから読み解く世界のマーケティング戦略    http://www.流.biz
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 2011/05/16     Weekly Mail Magazine by Makoto Matsuda
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2011年3月11日(金)の東北地方太平洋沖地震により
被害を受けられました皆様に心からお見舞い申し上げます。
一日も早く復旧をされますよう、お祈り申し上げます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■■
■■ ソーシャルメディア時代のWebマーケティング論

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

前回は通常の誌面から離れて、コラム形式で「ソーシャルメディア時代における
私的セルフ・ブランディング論」をお届けしました。私人間として今のソーシャ
ルメディアをどう捉えるべきかという個人的見解と実践手法をお伝えしたワケで
すが、今回はコトラーの2010年の近著でもある「コトラーのマーケティング3.0 
ソーシャル・メディア時代の新法則(http://amzn.to/jIJqiy)」を主として、企
業がソーシャルメディアにどのように対処すべきなのかを見ていきたいと思いま
す。

さて昨年の映画「ソーシャル・ネットワーク」のヒットに始まり、中東で吹き荒
れるソーシャルメディアを媒介とした民主化運動、そして東日本大震災での社会
インフラとしての活躍などで注目を集めるFacebook、Twitterなどのソーシャル
メディアの台頭。Webサイトを運営されている方なら顕著にご実感されている
ことでしょう。私自身もいくつかのサイトを運営している立場から解析をしてみ
ると、従来、集客の中心であったはずの検索エンジンからの流入率が減少し、こ
れらのソーシャルメディアからの流入が増大していることが見てとれます。特に
極端な例ですと、グローバル展開している音楽配信サイトでは、Facebookペー
ジの運営が奏功し、驚くことに、なんとアクセスの半数をFacebookが占めてい
る月もあることも事実です。ここから、新たなメディアの台頭によるアテンショ
ン・エコノミーの変貌が、今回の大きな問題提起として上げられます。

このような局面をコトラーはどう捉えているのでしょうか。「コトラーのマーケ
ティング3.0」の冒頭で次のように見解を示しています。

・参加の時代、グローバル化のパラドックス(逆説)の時代、クリエイティブ社
会の時代の登場がマーケティング3.0を形づくる。
・マーケティング3.0は、協働マーケティング、文化マーケティング、スピリ
チュアル・マーケティングの融合である。

さらにソーシャルメディアについても深く言及しています。

・ソーシャル・メディアが自己表現の要素を強めるにつれて、消費者は自分の意
見や経験によって他の消費者に影響を与えることがますます簡単にできるように
なる。(中略)ソーシャル・メディアは低コストであるうえに視点が偏っていな
いので、マーケティング・コミュニケーションの未来の媒体になるだろう。
・マーケティング3.0は、マーケティングのやり方が消費者の行動変化や態度変
容によって大きく変えられる段階だ。それは消費者がより協働的、文化的、精神
的なマーケティング手法を求める、より洗練された形の消費者中心の段階であ
る。

つまり、ソーシャルメディアの台頭によって、画一的な記号消費から消費者主体
のマーケティングによる価値形成がなされてきているということを意味していま
す。コレは、1990年代に盛んに言われてきた「パーソナライゼーション」や
「ワン・トゥ・ワン」といった企業主体の意味合いからも大きく飛躍したものの
ように感じられます。もはや企業が消費者を「知る」ことは大前提で、企業は消
費者と寄り添い、同じ共同体としてリーダーシップを取り、生活に密着したより
価値のある製品を作り出していけるかということを示唆しています。実際に本
書で企業が「価値主導のマーケティング」を進めるうえで必要なものとして、
「企業のミッション、ビジョン、価値」というキーワードを盛んに繰り返してい
ます。ここから企業は、従来のいわゆる自社本意な「ホームページ」、
「SEO」的なマーケティングの考え方を捨てるべき時代であることを認識して
いただくことが重要なのです。

これからの社会における新しい経済の在り方を説いた、クリス・アンダーソン
「フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略(http://amzn.to/mbmyox)」に
基づき、Webにおいてはモノの経済であるアトム(原子)経済ではなく、情報
通信の経済であるビット経済が、ひとたび何かがソフトウェアになると、それは
かならず無料になるという性質と、オンラインのコンテンツは、マーケティング
とPRとが融合されているという事実を受け入れなければなりません。この事実
を受け入れ、ユーザーにとって有益な情報を広く開示・共有する企業が、結果的
にはソーシャルメディアだけでなく検索エンジン上においても競争優位を築いて
いるのです。オプト・イン方式で顧客のメールアドレスとの対価に情報を開示す
るといったような、前時代的な手法はもはや通用しないのです。

コレを説明するには、従来までの検索エンジンの性質について理解する必要があ
るでしょう。Googleのページランクアルゴリズムは、ユーザーが構築するイン
バウンド(内向き)リンクが、アバウトネスを示す優れた尺度であると認識しま
す。基本的にGoogleは、そのリンクを示すメタデータが大好きなのです。重要
な事実として検索エンジンによる検索結果の順位は、「SEO」といった企業側
の努力の如何によらず、Webサイトのコンテンツが真に有益かどうか、オーガ
ニックな検索結果に順位として収斂されていくという事実です。コレは、多くの
人々よる「信頼」のオントロジーとエントロピーの増大によって、コンテンツの
価値の尺度は比例されることを示しています。

検索はノイズの海の中で弱体化が進み、情報流通基盤はソーシャルメディアに移
行します。そこではSEOではなく「信頼」がすべての価値観となるのです。実際
にGoogleはTwitterやFacebookにおけるリンクを直接的ではないにしろ、独自
のアルゴリズムによって採点していることを明らかにしています。そして、
TwitterやFacebookにおける活動こそが、従来のマーケティングで言われてき
た、いわゆるPR活動にほかなりません。ですから、これからの企業活動を考え
る際、例えばマーケティング部門とPR部門といった従来型の棲み分けには意味
がなく、企業としては自社のミッションやストーリーを伝えることに卓越した
「編集者」を育成することが有用であることを、「マーケティングとPRの実践
ネット戦略(http://amzn.to/iQyVlL)の著者であるデビッド・マーマン・ス
コット氏も述べています。

少し難い話になってしまいましたが、それでは既存の「ホームページ」はどのよ
うに活用するべきなのでしょうか。コレについては前述のデビッド・マーマン・
スコット氏が同書にて、「素晴らしいサイトは、ポッドキャスト、ブログ、
ニュースリリースなどのオンライン媒体が交差する場所」と表現しています。つ
まりは、各SNSで持つアカウントを支店として、自社のホームページはそのハブ
として活用すべきだと考えるのが最良でしょう。そして、ホームページを設計す
る際には「ファインダビリティ」を考慮すべきだと唱えるのが、「アンビエン
ト・ファインダビリティ ―ウェブ、検索、そしてコミュニケーションをめぐる
旅(http://amzn.to/lrA851)」という書籍を著したPeter Morville氏です。同
書は「われわれは、ネットワーク上の情報を現実世界にエクスポートするための
新たなインターフェースを作り出すと同時に、現実世界の莫大なデータをネット
ワークの世界にインポートしつつあり、インターフェースから情報そのものに移
行するだろう。情報検索の課題自体が根本的に変化し、情報とのインタラクショ
ンという新たなパラダイムが現れた」という、なんとも刺激的な内容の本なので
すが、「情報の利用が情報の入手しやすさの度合いに正比例して増加する」とし
て、「情報の見つけやすさ」と「ユーザビリティとしてのデザイン」の重要性を
示しています。そして、それとともに我々はプッシュ型とプル型の両方を重視す
る必要があり、幅広いインタラクションの手法を全面的に活用しなければならな
いとしています。そのガイドラインとして以下の点を指摘しています。

・役に立つこと(Useful)
・使いやすいこと(Usable)
・望ましいこと(Desirable)
・探しやすいこと(Findable)
・アクセスしやすいこと(Accessible)
・信頼に値すること(Credible)
・価値を生み出せること(Valuable)

さて、結論に移りましょう。ソーシャルメディアがもたらした今日では、信頼は
縦の関係より横の関係に存在しているということをコトラーは述べており、コレ
を今日の私たちは幾度となく目の当たりにしてきました。このような変化によっ
て企業のマーケティングは、ブランドを「創る」ことではなく、「語られる」こ
とによって創られていくということを意識しないといけないでしょう。横につな
がっている世界では、ブランドを取り巻くストーリーの大きな部分が集合知から
生まれるのです。最後にコトラーの指摘を引いておきます。

・豊富な情報とネットワーク化されたコミュニティに導かれて消費者が力を持つ
ようになった時代には、ブランドとポジショニングと差別化のバランスこそが必
要になる。
・消費者エンパワーメントは消費者カンバセーション(ネット上の会話)のプ
ラットフォーム(基盤)になる。

これから企業がソーシャルメディアとどのように付き合っていけばよいのか、こ
の命題は今後も続く議論となることでしょう。ただ安易に企業は積極的に情報開
示すべきだということでは何の解決にもなりません。しかし、積極的に消費者と
会話し、参加する姿勢を持つことで大きな競合優位を築くことになるのは間違い
ありません。その姿勢をどのように演出することができるか、ここが次世代の
マーケターの手腕の見せどころになってきます。その根底を形成し、企業が見据
えるべきキーワードは、コトラーも同書で述べていますが、「変化の約束」、
「感動的なストーリー」、「消費者の関与」なのです。消費者に対しサプライズ
と価値を提供し、情報連鎖を生み出すストーリーテラー。商品よりも顧客にとっ
てのニュースを売る。それこそがこれからのマーケターの姿だと言えるでしょ
う。

以上、今回はここまでです。いかがだったでしょうか。さて、次週は次号は通常
の内容に戻ります。本メルマガも、まだまだ序章に過ぎません。ぜひ、一緒にコ
トラーの真髄に迫っていきましょう。次号もご期待ください。

───────────────────────────────────
「こんな話を書いて欲しい」などといったご要望やご質問があれば、いつでもお
気軽にメールしてください。メールマガジンの内容でご質問やご意見、ご相談な
どあれば、info@ryuu.jpまでお気楽にメールいただければ幸いです。
本メール・アドレスに対し、広告・営業行為など告知を目的とする活動に
使用することを固く禁じます。
■ 発行元:株式会社 流
■ Twitter:http://twitter.com/funk45rpm
■ Facebook:http://www.facebook.com/funk45rpm
■運営サイト『Beat Generation2.0』:http://www.illbeatnik.com/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


もし興味があれば、ぜひメルマガにもご登録を。
ご登録いただき、info@ryuu.jpまでその旨お伝えいただければ、
過去のバックナンバーもすべて無料でお届けします。

ご登録はコチラをクリック

コトラーから読み解く世界のマーケティング戦略

Track Back

この記事へのトラックバックURL:
http://www.流.biz/mt/mt-tb.cgi/121

Comment